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日本学級経営学会立ち上げのご挨拶
教育実践の基盤として,また,学校生活の基盤として学級経営の重要性は広く認識されています。しかしその一方で,学習指導要領において,その定義はなく内容も示されていません。また現段階で,学部の教員養成段階において「学級経営」という専門科目はありません。一部の大学で,選択科目や選択必修科目として設置はされてはいますが,その内容は指導する教員に任されているのが現状です。
そのことは,教員研修においても同様の傾向が見られます。学級経営にかかかわる講座を実施する自治体は増えていると見られますが,希望研修の場合が多く,また講座の内容も講師に任されていているので,養成段階における自由科目と同じ構造にあります。また,近年は学力向上の基盤としての学級経営の在り方が注目されつつありますが,授業改善は,地域ぐるみ学校ぐるみの組織的な取組がなされているにもかかわらず,学級経営についてはそれぞれの教師の個別の取組に任されているのが現状です。
現在学級経営は,多くの教師がその必要性や意義を認めながらも,それを体系的な共通事項として学ぶ機会がなく,実際はそれぞれの教師の経験則に頼らざるを得ないのが現状です。経験は,一人ひとり異なります。ある教師にとっての成功が別な教師の成功を予期するかというと必ずしもそうではありません。学級経営は個別の教師の文化論になってると言わざるを得ません。その結果,授業改善に取り組もうにも学びの場としての学級が機能せず,十分にその効果が現れず,教師次第で子どもたちの状況が変わってしまうという現象が報告されています。
全国のどの教室からも子どもたちの笑顔と真剣に学び合う姿が見られるべきではないでしょうか。子どもたちの健やかな成長を願うならば,学級経営の充実は学校教育においては不可欠です。そのためには,学級経営に関する汎用性の高い情報の共有が必要です。しかし,今までそうならなかったのには,いくつかの要因が考えられます。その大きな理由の一つに,学級経営に関する研究の不足があります。実践面においては熱心な取組がなされているにもかかわらず,研究論文等は異例とも言えるほどの数の少なさです。これまで生み出され来た,そして今も続々と生み出されている実践には,すばらしいものが多々あります。しかし,それらはどちらかというとその実践の確からしさ,つまりエビデンスが実践者の主観的な表現によるものになりがちでした。多くの人たちでそれを共有するには,その実践の効果に関するある程度のデータが必要です。子どもたちの生活の多様化による教室の様相の多様化に対応するためにはそうしたエビデンスが必要です。
ただ,一方で学級経営がなされるのは実践の現場です。実践の現場にいる教師に届かないような形で研究の蓄積を進めても,それは従来のような実践と研究の乖離状況をつくるだけです。そこで,これまでの実践,また,学術研究を踏まえた上で,実践の現場にいる方々が活用可能な形で,情報を集積し蓄積し,それらを分類し整理し,さらによりよいものを開発することを通して学級経営の研究を進めていきたいと考えています。
立場を超えて,一人でも多くの学級経営に関心をもつ方々に本学会の趣旨に賛同いただき,よりよい教育の創造に共に参画していただけば幸甚です。
日本学級経営学会 赤坂真二・阿部隆幸
2018年2月1日
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